在庫・受発注管理アプリ 仕様書¶
このアプリが「どんな機能を持ち」「商品(モノ)と金額(数字)をどう扱っているか」を、担当者・マネージャー向けにまとめた仕様書です。専門用語はできるだけ避け、必要な用語は言い換え・具体例を添えています。数字や在庫がどう動くかの「ルール」まで踏み込んで説明します。
- 対象読者: 商品管理・経理・貿易の担当者、責任者(眞鍋様ほか)
- 読み方: 第1章で全体像 → 第2〜5章で機能ごとの詳細 → わからない言葉は第8章「用語辞典」
- ボリューム: 全機能を網羅。必要な章だけ拾い読みでも使えます。
0. はじめに(このアプリの成り立ち)¶
- このアプリは AppSheet(ノーコードの業務アプリ)と Googleスプレッドシート(データの入れ物)でできています。画面はAppSheet、データはスプレッドシートに保存されます。
- 一部の複雑な計算・処理(在庫の増減、書類の自動作成など)は、裏側のプログラム(GAS)が自動で行います。担当者はボタンを押すだけで、面倒な計算はアプリがやります。
- したがって本書は「画面の操作手順」ではなく、「何を・どう管理し、数字がどう動くか」の仕組みを説明します(操作手順は別途の操作マニュアルを参照)。
1. アプリの全体像¶
1-1. 何をするアプリか¶
メーカーへの発注 → 入荷(納品)→ 在庫 → お客様への出荷 という商品の流れと、それにともなう 支払い・請求 を、1か所で管理します。加えて、書類の自動作成、納品書・請求書のチェック、支払予定額の見込み を行います。
1-2. モノとお金の流れ¶
モノ(商品)の流れ
①発注 ②納品・入荷 ③在庫 ④出荷
メーカーへ注文 ─▶ 商品が届く ─▶ 倉庫にたまる ─▶ お客様へ送る
(在庫が増える) ▲ │ (在庫が減る)
│ │
⑤棚卸(数え直して合わせる)
│ │
⑥返品・キャンセル
(+倉庫間の移動)
お金(数字)の流れ
発注金額 ─▶ 納品書・請求書のチェック(照合)─▶ 支払予定額(いつ・いくら払うか)
1-3. データの持ち方(3種類)¶
| 種類 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 台帳(マスタ) | くり返し使う基本情報 | 商品・仕入先・お客様・倉庫・担当者 |
| 日々の記録(トランザクション) | 取引のたびに増える記録 | 発注・納品・在庫・出荷・入出庫・棚卸 |
| 集計・管理 | 帳票作成や進捗管理の作業台 | 支払予定管理・帳票出力管理 など |
2. 台帳(マスタ)の詳細¶
一度登録すれば、注文・出荷のたびに「選ぶだけ」で使えます。ここが正しくないと、後の数字・書類がずれます。
| 台帳 | 役割 | 主な項目(例) |
|---|---|---|
| 商品マスタ | 取り扱う全商品 | 商品名(日本語/英語)・JANコード・総入数(1箱の個数)・袋入数・上代(定価)・仕切(卸値)・仕切@CT(1箱の卸値)・発売年月・サイズ・重量・原材料・カテゴリー・輸出禁止国 |
| 発注先情報マスタ | 仕入れる相手(メーカー) | 企業名・コード・連絡先・支払区分(前払/通常)・支払サイト(翌月末など) |
| 発注元マスタ | 自社側の発注窓口 | 発注元名 |
| 得意先情報マスタ | 売る相手(お客様) | 得意先名・連絡先 |
| 出荷先情報マスタ | 送り先 | 送り先名・移動中対象かどうか(海外法人など) |
| 倉庫情報マスタ | 商品を置く倉庫 | 倉庫名(国内・海外) |
| 従業員マスタ | 担当者 | 氏名・メール(「誰が処理したか」の記録に使用) |
| 原材料マスタ | 素材の日英対応 | 日本語名・英語表記(貿易書類で自動英訳) |
用語: 「総入数(そうにゅうすう)」=1カートン(箱)の中の個数。「上代(じょうだい)」=定価。「仕切(しきり)」=仕入れの卸値。
3. モノ(商品)の流れ ― 機能詳細¶
3-1. 発注(メーカーへ注文する)¶
- 発注データ(親)+明細(子) の形で管理します。1つの発注の中に、商品ごとの明細行が並びます。
- 主な項目
- 親(発注管理データ): 発注先・発注元・倉庫・ステータス(納品前/一部納品/納品完了)・発注日・納品予定月・発注点数・納品点数 など
- 子(明細テーブル): 商品・数量(カートン)・総入数・上代/仕切の金額・納品予定日・納品数・納品完了 など
- 発注書をアプリから出力できます。
- 発注先IDが正しく入っていないと、後の金額・集計でメーカー名が空欄になるなどの不具合が出るため、取り込み時の変換手順(正しいIDへ変換してから取り込む)が重要です。
3-2. 納品・入荷(商品が届く → 在庫が増える)¶
商品が届いたら「納品処理」を行い、届いた数だけ在庫が自動で増えます。3つのやり方があります。
| モード | 使う場面 | 対象 | 納品する数 |
|---|---|---|---|
| 一括納品 | 注文がまとめて全部届いた | その発注の未完了の全明細 | 各明細の残り全部 |
| 個別納品 | 特定の商品だけ届いた | 指定した1明細 | 残り全部 |
| 分納(ぶんのう) | 一部だけ先に届いた | 指定した1明細 | 入力した一部の数 |
共通のルール(自動計算) - 残数 = 発注数 −(キャンセル分)−(すでに納品済みの数)。この残数を超えて納品されることはありません(過剰入荷を構造的に防止)。 - 届いた数(個)= カートン数 × 総入数。この分だけ在庫が増えます。 - 納品完了の判定: その明細の納品数が「発注数 − キャンセル」に達したら「完了」、まだなら「一部納品」。 - 納品日 = 実際に届いた日(フォームで入力)。この日付は支払予定額の計算に直結する重要データです(第4-3章)。 - 一括納品のときは、発注ヘッダで入力した納品日が、日付未入力の明細に適用されます。 - 「誰が納品処理したか(担当者)」も記録します。
入荷取込(ハートランド社など): 倉庫から届く入荷情報(Excel)を取り込み、在庫に反映する仕組みもあります。
3-3. 在庫管理(在庫のコア)¶
在庫は 「商品 × 倉庫 × 発売年月 × 発注元」の組み合わせごと に1レコードで管理します(同じ商品でも倉庫が違えば別在庫)。
| 数字 | 意味 | 計算 |
|---|---|---|
| 現在庫数 | いま実際に倉庫にある数 | 納品で増え、出荷・返品・棚卸で増減 |
| 出荷予定数 | これから出荷する予定の数 | 受注で積まれる |
| 有効在庫数 | いま自由に使える数 | 現在庫数 − 出荷予定数 |
| 移動中数 | 送っている途中の数(まだ自社資産) | 海外出荷などで使用 |
| 在庫評価額 | 在庫の金額換算 | 現在庫数 × 仕切 |
- 有効在庫数 が実務上いちばん重要な指標です(「売れる数」)。
- 在庫の増減は基本「個」で計算します(入力はカートン/袋/個のどれでも可)。
3-4. 出荷(お客様へ送る)¶
- 受注 → 出荷 の流れを、出荷データ(親)+出荷明細(子)で管理します。
- 出荷を登録すると 在庫が減ります。
- 単位: ケース/袋/個 から選べます(お客様・商品ごとに数え方が違うため)。在庫増減は「個」ベースで計算。
- 移動中の扱い: 海外法人(例: たまてこ韓国)など所有権の移転が後の出荷は、出荷時にすぐ在庫を消さず「移動中」として保持し、入庫完了で確定します。
- 出荷時: 現在庫数 −X / 移動中数 +X
- 入庫完了: 移動中数 −X(送り先は在庫管理の対象外)
- 期末の自社資産 = 現在庫数 + 移動中数
3-5. 倉庫間移動¶
- 国内⇄海外など、倉庫から倉庫へ在庫を移す処理です(移動データ+明細)。
- 移動元から出て(出荷)、移動先に入る(入荷)まで、途中経過(移動中)を管理します。
3-6. 棚卸調整(実数に合わせる)¶
- 倉庫の実際の在庫を数えて、アプリの数字とズレていたら実数に合わせる機能です。
- 「返品」でも「キャンセル」でもない、数え直しての補正専用。
- 実在数を入力すると、差分(実在数 − 現在庫数) を在庫に反映し、
- 増えた場合 →「棚卸調整入庫」
- 減った場合 →「棚卸調整出庫」 として入出庫履歴に1件残します。担当者も記録。
- 単位はカートン/袋/個から選択(総入数・袋入数で自動換算)。差がなければ何もしません。
3-7. 返品・キャンセル¶
「もともと何個仕入れ、何個返したか」の内訳を消さずに管理します(例: 仕入100 − 返品10 = 正味90)。6パターンあります。
| 種類 | 場面 | 在庫 | 記録 |
|---|---|---|---|
| メーカー返品(個別/一括) | 仕入れた商品をメーカーへ返す | 減る | 返品出庫 |
| 販売先返品(個別/一括) | お客様から戻ってくる | 増える | 返品入庫 |
| 発注キャンセル(個別/一括) | 未納品分の注文を取り消す | 動かない(数量を減らす) | 物流ログなし |
- 在庫がマイナスになる返品はできません(不足時はエラーで中止=安全弁)。
- 海外(在庫管理外への販売)の返品は、別要件として扱います。
4. お金(数字)の流れ ― 機能詳細¶
4-1. 金額の考え方¶
- 上代(定価) と 仕切(卸値) を、単価と合計金額で持ちます。
- 仕入れの金額計算は「仕切_合計金額」を使います(発注先ごとに合算)。
4-2. 納品書・請求書のチェック(OCR照合)¶
紙・PDFの納品書/請求書を読み取り(OCR)、アプリの発注データと突き合わせて正しいかを確認する仕組みです。
- 読み取り: PDFをアップロードすると、AIが日付・商品・数量・金額などを自動で読み取ります。
- 候補の自動マッチング: 読み取った伝票に対し、発注先・日付・金額の近さから対応する発注を自動で候補提示します。手動での検索追加も可能。
- 照合ステータス(3段階): 明細ごとに「未照合/部分照合/照合済」を管理し、分納(分けて届く)では残数量ベースで累計します。
- 複数発注にまたがる納品書や、1つのPDFに複数伝票が入っている場合にも対応(自動で分離)。
- 支払突合: 納品書↔請求書の2者を突き合わせ、取引先ごと・全体合計で差異を確認できます。
- 照合結果はアプリの発注データに書き戻され、あとから履歴として確認・やり直しができます。
4-3. 支払予定額(いつ・いくら払うか)¶
「ある月に、メーカーへ合計いくら支払う見込みか」 を出す帳票です。基本ルールは「その月に納品・締めた分を、翌月末に支払う」。
明細ごとに3区分で集計します。
| 区分 | 対象 | 支払う月の基準 |
|---|---|---|
| 確定済み | 納品が完了した明細 | 実際の納品日 + 支払サイト |
| 納品前予定 | まだ納品前の明細 | 納品予定 + 支払サイト |
| 前払 | 前払い取引先の明細 | 発注した月(サイト無視) |
- 支払サイト(発注先マスタで設定): 当月末=そのまま/翌月末=+1か月/翌々月末=+2か月。
- 支払月 = 基準の月 + 支払サイトのずれ。例:5月納品・翌月末 → 6月末支払。
- 仕切単価が未入力の明細は金額0で埋もれないよう、件数を「要確認」として可視化します(推測はしない)。
- 重要な前提: 計算は「納品日」を使います。納品日が実際とズレると支払う月がズレます。
- 例:実際は5月に届いたのに、アプリの納品処理を6月に行うと納品日が6月になり、本来6月末払いが7月末払いに見えてしまう。
- → だから第3-2章「実際の納品日を入力する」ことが極めて重要です(この点は不具合として発見・修正済み)。
4-4. 前払い(先払い)取引¶
- 商品が届く前に支払うメーカーは「前払」(発注先マスタの支払区分)として扱い、発注した月に支払い計上します。
- 前払いは在庫には反映しません(実際に届いたときに通常の納品処理で在庫計上)。
- 前払いの請求書も、商品内訳ありの様式で照合できます。
5. 帳票(書類)の出力¶
アプリのデータから、必要な書類を自動作成します。
| 書類 | 内容・用途 | 主な入力 → 出力 |
|---|---|---|
| 受注表 | 注文内容の確認表 | 受注データ → 表 |
| 発注書 | メーカーへの発注 | 発注データ → 発注書 |
| 納品書・請求書 | 取引の証憑 | 出荷・受注データ → 書類 |
| インボイス・パッキングリスト | 貿易(海外取引)書類 | 出荷・商品データ → 英語書類(原材料を自動英訳) |
| 貿易資料(現在在庫データ) | 貿易書類作成用の在庫抽出 | 有効在庫>0の商品を、商品名(英)・素材(英)・カテゴリー・サイズ・重量・上代・仕入価格・輸出禁止国など16項目・倉庫別タブで出力 |
| 現在庫集計 | 今の在庫一覧 | 在庫データ → 一覧 |
| メーカー別 取扱商品履歴 | メーカーごとの過去取扱全商品 | 明細+在庫 → 26項目の一覧(個別/複数/一括、期間絞込あり) |
| 支払予定額 | いつ・いくら払うか | 明細+支払条件 → 3区分の集計(第4-3章) |
6. 数量・単位の仕組み¶
商品ごとに数え方が違うため、次の関係で自動換算します。
- カートン(箱/C/S): 仕入れの基本単位。
- 総入数: 1カートンの中の個数。
- 袋: 1カートンの中の袋数(商品による)。
- 換算: 個数 = カートン数 × 総入数、袋 → 個 = 袋数 × 袋入数。
例:1カートン150個入りを2カートン仕入れ → 在庫は 300個 増える。
在庫の増減・照合はすべて「個」を基準に計算し、入力はカートン/袋/個のどれでもできるようにしています。
7. 業務ルール・注意点(まとめ)¶
- 有効在庫数 = 現在庫数 − 出荷予定数(自由に使える数)。
- 納品日は「実際に届いた日」を入れる(処理した日ではない)。支払予定額がこれに依存する。
- 在庫は「商品 × 倉庫 × 発売年月 × 発注元」ごとに管理(同一商品でも倉庫違いは別在庫)。
- 発注先IDは正しいIDに変換してから取り込む(名前のまま取り込むと集計が崩れる)。
- 在庫がマイナスになる操作(返品・出荷)はエラーで止まる(安全弁)。
- 海外向けは「移動中」で所有権移転タイミングを管理(期末資産=現在庫+移動中)。
- 前払い取引は在庫に波及させず、発注月に支払い計上。
8. やさしい用語辞典¶
| アプリ・ITの言葉 | やさしい言い換え |
|---|---|
| マスタ | くり返し使う情報の台帳 |
| トランザクション | 日々の取引の記録 |
| 明細 | 1つの注文・出荷の中の商品ごとの行 |
| 発注先 | 商品を仕入れる相手(メーカー) |
| 得意先/出荷先 | 商品を売る相手/送り先 |
| 現在庫数 | 今ある数 |
| 有効在庫数 | 今、自由に使える数(今ある数 − 出荷予定) |
| 出荷予定数 | これから出す予定の数 |
| 移動中 | 送っている途中(まだ自社のもの) |
| 納品/入荷 | 商品が届く(在庫が増える) |
| 出荷 | 商品を送り出す(在庫が減る) |
| 分納 | 注文の一部だけ先に届くこと |
| 棚卸 | 実数を数え直して合わせること |
| 照合(OCR照合) | 納品書・請求書を読み取り正しいか突き合わせる |
| 支払サイト | 支払いの期日ルール(翌月末など) |
| 上代/仕切 | 定価/卸値 |
| 総入数 | 1箱の中の個数 |
| JANコード | 商品のバーコード番号 |
| GAS | 裏側で自動計算するプログラム |
| AppSheet | このアプリを作っているノーコードの土台 |
9. 機能 早見表¶
| 分類 | 機能 | ひとこと |
|---|---|---|
| モノ | 発注 | メーカーへ注文・発注書出力 |
| モノ | 納品(一括/個別/分納) | 届いた商品を在庫に入れる(実納品日を記録) |
| モノ | 入荷取込 | 倉庫のExcel入荷情報を取り込む |
| モノ | 在庫管理 | 倉庫別・有効在庫数・移動中・在庫評価額 |
| モノ | 出荷 | お客様へ送る(在庫が減る・移動中対応) |
| モノ | 倉庫間移動 | 倉庫から倉庫へ在庫を移す |
| モノ | 棚卸調整 | 実数に合わせる |
| モノ | 返品・キャンセル(6種) | 返品/取消の記録と在庫調整 |
| お金 | 納品書・請求書 照合 | 書類の正しさをOCRでチェック |
| お金 | 支払予定額 | いつ・いくら払うか(3区分) |
| お金 | 前払い照合 | 先払い取引の管理 |
| 書類 | 各種帳票出力 | 受注表・発注書・納品書・請求書・インボイス・貿易資料・現在庫集計・メーカー別履歴 |
もっと詳しく¶
- 各機能の数字のルール・データ項目・具体例まで詳しく知りたい方は、アプリ仕様(詳細) をご覧ください。
- 操作手順(画面つき)は、別サイトの操作マニュアル(返品・キャンセル/納品書・請求書OCR照合/棚卸・在庫調整)をご覧ください。